淫売婦/葉山嘉樹
絶対あの一文を書きたかったんだろうな
読んでいると作者はこの部分が書きたかったんだなってわかる時がある。
『春は馬車に乗って』の春を撒き撒き~とか、『人間失格』の恥の多い~とか。
これもその一つ。別にわかっても良いんだよ。面白ければ。
プロレタリア文学の看板がなければ、エログロ小説で終わりそうだけど、『セメント樽の中の手紙』のように、ただそれだけではない美しさを感じるのはなぜだろう。
事には至らないけど、瀕死の状態でも生きて行くために体を売る女と、そんな女を成り行きで買いに来た主人公。主人公の若さと偽善とそれに気付くところは嫌じゃない。
どうにも変えられない現実ってのはどこにでもあるんだね。
「僕は君の頼みはどんなことでも為よう。君の今一番して欲しいことは何だい」と私は訊いた。 「私の頼みたいことわね。このままそうっとしといて呉れることだけよ。その他のことは何にも欲しくはないの」 悲劇の主人公は、私の予想を裏切った。
これは映像化できないな。トラウマものよ。というくらい攻撃力のある話でした。
でも私は美しさを感じてしまったのよ。
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